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藪庭の椿たち

縮こまるような寒さが来ないまま、鹿児島の冬は終わりを告げ、賑やかな春へと突入してしまいました。
タイトルに椿をつけながらも、すぐに摘める菜の花の写真で始まります。
パスタやおひたしに、私の春の楽しみは、春を食べること、です。

私のデザインのお仕事もありがたいことにたいそう賑やかなことになっており、そんな状況だからこそ心落ち着けて、粛々と目の前のことから順番に整えてゆく。そんな感じの毎日です。

やらなければならないことが多いときこそ、さらっと笑って涼しい顔で。
まずは自分が静かに行動することで、次第に周りも落ち着きを取り戻し、慌てることは何もないのだと穏やかになってきます。
穏やかになってから、とにかく猛烈に集中して働く、と。

そんなわけですから、私の藪庭もつられてますます渋いことになってきています。
やはりこれからの季節は椿です。

命の盛りの短い草花は「水が切れた」だの「虫がついた」だの、注文も多いのでほぼスルー。
厳しい寒さを越えてこそ初めて固い蕾がほころんでくる椿の健気さ、気高さには、歳を重ねるごとに惚れ惚れしてきます。

こんなに乙女なのに、ついた名前は「太郎冠者」。
江戸時代から名前がある古典椿の代表的な品種です。


ぽとりと落ちた花一つさえ愛おしくなる椿です。


私が自分で藪庭に植えた椿の中では、最年長の「大山白」。背丈を超えてこんもりしています。
しなやかな枝ぶりと、細めの葉が美しく、日当たりや施肥の関係もあってか育っている割には花数がとても少ない。
花数が多すぎるというのもまた野暮ったいものなので、私の藪庭らしいいい加減を察してくれているのでしょう。

「いま熊本なんですけど、白い藪椿、いります?」
と、こないだ連絡をくれたのは、歳下の椿愛あふれる男性(心はいい魔女)。
てっきり普通の(?)白藪椿かと思っていたら、なんと「最小白椿」という、ちっちゃな白藪椿!
「大山白も白椿、何が違うのさ」と思うむきにはまったく盛り上がらないのでしょうが、花の咲く向きも開き方も全く違いますわよ。葉っぱも丸みがありますでしょう?

こちらは一年前に植え込んだ「白孔雀」、沢山の蕾をつけ、いよいよほどけてきました。蕾の形からしてまったく違っています。葉っぱも妙に細長く、開く花の姿と見事にリンクしています。

ただ、今後あまりにも花をつけるようでしたら、蕾を落としていくつもり。
白椿とはいえ豪華な姿の花なので、見苦しくならないよう整える必要があるかもしれません。

おそらく私よりも長く生きることになる椿たち。
たまたま見かけた人にも愛されるような姿に育てたい、というのがささやかな楽しみであったりもします。

椿は私を急かしません。
ゆっくりゆっくり、藪庭で育ってくれているからこそ、私は日々心穏やかでいられるのかもしれません。

今年はあまりにも仕事が多すぎなのですが、この藪庭があれば、きっとだいじょうぶ。