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すべてが暮らしの上に。

春先から世界中で嵐が駆け巡る中、私はと言えば、ステイホームとリモートワークが通常の、いつもの仕事に没頭しておりました。
製作チームメンバーとも原稿やデータをやりとりしながら、「何か変わった?」「なにも変わらないねぇ。むしろ忙しい気がする」という会話を交わしていました。
経験したことのない世間の状況に、臨機応変に動く現場をサポートしていく。必要なものを作っていく。
裏方としてのスタンバイもいくつか続きました。

初めてお仕事をご依頼いただいていた「株式会社 丸俊」さんの総合カタログも、そんなタイミングに見事に重なり。
4ヶ月くらい取り組んでいたのかな。

鹿児島・枕崎産の本枯節やかつお節製品について、たくさんのことを学びながら、見やすく解りやすく、購入しやすいカタログにまとめさせていただきました。

今までにお持ちでなかった写真の撮影や、イメージ写真の選定。商品カテゴリーの整理と配置、コピーや説明文の一文字に至るまで、内容のすべてをリニューアル。

カメラマンさん、ライターさん、フードコーディネーターさん。
一人で仕事を背負って動いている方々と製作チームを組み、私がディレクターとデザイナーを兼ねます。

たまに驚かれるのですが、細かな文字の一つ一つ、写真の切り抜き作業、配置作業などのデータ組み、すべて私が手作業でやっています。
作業外注なし。
ワンクリックでさーーーっと流し込まれるのではありません。データはすべてデジタルですが、作業はアナログの極みです。
人間が自分の目で、手で、然るべきところに配置しないと「いい感じ」にはならないのです。

最終的に32ページものボリュームになってしまいましたが、「かつお節の良さをちゃんと伝えられるカタログ」「美味しそうで、かつお節が買いたくなるカタログ」に着地できた気がします。

お仕事の間中、いつにも増してたくさんのかつお節を食べました。
出汁もいろんな方法で引きました。
味見をするたびに、美味しいなぁ…と、ふうっと息をこぼす毎日。

なんと贅沢なお仕事でしょう(笑)

ある日のお昼の冷やしうどん。
かつお節があれば、簡単すぎて嬉しくなるごちそうの完成。

私の仕事はすべて、私自身の暮らしの上に乗っかっています。
美味しいと感じるもの、目を見張る一瞬の景色や自然、植物、鳥の声。
テレビやニュースの雑音を遮断して、あえて世間の騒動を言い訳にして引きこもれたことは、もしかしたらこれからのいい経験になったのかもしれません。

一人で集中すること、学ぶこと、コンディションを整えること。
惑わされないこと。
静かに考えながらの毎日でした。

そして季節は梅雨に入り、雨音をBGMに、時に似合う曲を混ぜながら、今日も私の仕事は変わることなく続きます。