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印刷の現場に支えられて

そもそも私は紙に印刷するのが好きなのだ。

直接紙やキャンバスに描くよりも、コピーして作る冊子の方に楽しさを感じているような子どもだった。
小学校の修学旅行の〈しおり〉は、担任の先生から指名されて一人で行程表や持ってゆくものなどをイラスト入りでまとめあげて配布していた。
美術大学の中でも絵画系を選ばずに、デザイン系を選んだのは我ながら偉かったと、デザイナーという存在もこういう仕事があることもまったく知らず進路を決めた高校生の頃の私を褒めてあげたいと思う。

そして、ほいほいと進学させてくれた母の凄さをあらためて思う。
(母曰く、何も考えてなかった!そうな…。さすが母娘だ)

そんなわけで、大人になった私は、何千枚何万枚という紙に印刷して仕上げる、デザイナーというお仕事をしています。
どの紙を選ぶかで、印刷はがらりと変わります。
デザインという仕事には必ず予算というものがあるので、好き勝手に選ぶことは出来ませんが、それでも粘って素敵な紙を探します。探せばどこかにあります。
安易につやがあるのはアレ、つやがないのならコレ、みたいな選択紙はありえません。

そして、本番の紙でちゃんと色校正を取る。

作業の時点からモニターで確認出来るし、高性能のプリンターがあるので、限りなく本番の仕上がりに近い確認は出来ます。
…が。
紙によって違うんです、インクの染み込み方が。

データ通りに印刷したって、思った通りの色は出て来ないんです。
インクは紙に染み込む=沈むのです。
幸いなことに、私が指定する紙を面白がってくださる印刷現場の人たちのおかげで、さもあたり前の顔をして普通に出てきます。
インクが紙に沈まないよう紙の性質を見極め、データを調整してくれている、表には出ない職人技だと頭が下がります。

安心して印刷を任せられる人たちがいることに、あらためて感謝する毎日です。そのおかげで、私はデザインに没頭出来るのです。