自分で楽器を演奏するようになってから、旅の仕方もずいぶんと変わったような気がします。
音楽の都といえば、ウィーンでしょう。
音楽の父といえば、バッハでしょう。
そんなことをつぶやきながら、一人ではじめてウィーン&ドイツの旅に出かけたのももう3年半も前のことです。いや、まだたったそれしか経っていないのか…。
現地情報を頼りに楽器屋さんや楽譜屋さんを見つけ出して、迷いながら買いに行ったり、演奏を楽しむ方たちの練習にお邪魔してみたり。ドイツ語はまったくダメだったけれども、英語でなんとか伝わるところも多く、「私も音楽をやっています」ということが、背中を押してくれたように思います。
まず各種メーカーのリコーダーを持ってきてくれて、「ゆっくり選んでね!」と椅子まで勧めて一人にしてくれます。1日目は吹き比べてメーカーを決め、日をあらためて出かけて(一旦冷静になるために…笑!)そのメーカーから1本を選びました。
その頃の私はヨーロピアンボックスウッドを吹いていたので、もう少しカジュアルなのも欲しいと相談したところ、結果ペアウッドに落ち着きました。
「あなたに合うのがあってよかったわ!」
「君の息、イイネ!」
奥でメンテナンスをしている職人さんたちも出てきたりして。
ネットでぽん!と買うのではなく、いちいちこういうのが楽しいと思うのです。
プロだとか、アマチュアだとか、そういう分け方ではなくて、「音楽が好きで楽しんでいます」という人たちがあたり前にたくさんいて、その素敵な空気と笑顔に魅せられて今に至ります。
ふたたび今年も9月、長島美術館で演奏することになりましたので、選曲などの準備を始めました。
楽器もずいぶんと増えてきましたが、このシンプルな楽器の奥深さを知るにつけ、「たかが笛、されど笛」なのであります。
旅してきた町の空気や音を思い返しながら、私だからこそ描ける音色をこれからも探してみたいと、思いは深まってゆきます。