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自分だけの地図

私にとっての旅先からのたからもの。
それは、自分で歩きながら書き込んだ、現地の地図です。

今では正確な地図をネットでもスマートフォンでも見ることが出来るし、ガイドブックには細かくおすすめの人気スポットが特集されていたりします。

が、天の邪鬼な私は、他の人が飛びつくようなコトやモノを避ける習性があるのです。あまりにも細かな情報を入れすぎてしまっては、誰かの真似をしながら旅をすることになってしまうではないですか。
誰かがまとめてくれた情報をたどるばかりに気を取られて、目の前にある、いま偶然現れた素敵なこと、出会う人の表情を見逃したくないのです。
心に残る自分の旅がしたいのです。

滞在する国や町の交通情報、宿のことなどはしっかりと確認しますが、到着したらすぐに現地のインフォメーションで地図をもらい、ひたすら歩いて旅を楽しむことにしています。

以前、個人旅行ででかけたラオス、初めてのルアンパバーンの地図は、今でも街の景色が蘇るくらいとっておきのたからものです。

その時に滞在した宿は、安くてとても素敵だったのですが、歩きながら「次に来た時にはここにも泊まりたいな〜」なんて思いながら別の宿をチェックして書き込んでいたりします。
通りがかりの小さな商店の麺がおいしかったとか、週末に夜市が立つ通りとか、朝市で少数民族の手仕事のバッグが下がっていた商店とか、怪しい人形を作って売っていたおばちゃんのテントがあったとか。

けっこう急な坂を上がったら、祈りを込めて丘の上から二羽の小鳥を空に放つ場所だったとか。その小鳥はちゃーんと商売のおばちゃんの元に帰ってきて、またギュッと捕まえられて小さな竹の籠に詰め込まれていたとか(笑)
そのちゃちで小さな手作りの竹籠は、もらって帰って来て、今でも窓辺に下がっています。

自分の心が反応した場所にたくさん出会い、書き込みが増えるごとに、旅は自分だけのものになります。

実はいま、私のところには、鹿児島の某エリアの日本語・英語・フランス語・中国語・韓国語で編集するガイドマップのお仕事がやってきています。
おすすめの店やレストランの情報がていねいに載っているのですが、「片面はまったく素の町の地図にして、自分で書き込めるようにしたらいいのに…」と旅好きな外国人(=私)は突っ込みながら仕事をしています。
なかなかこういう外国語で情報を整理する仕事は珍しいので、面白がって取組んでいますが、本音を言うともっと旅心を滲ませたいところ。
次回以降があればいいな…と願っています。

旅先で思わぬ人と出会い、人生の刺激をもらい、見たことのない景色に時間を忘れ立ち尽くす。自分で旅をして、地図を作る。
私にとっての旅は、人生そのものかもしれません。

さて、次はどこへ旅をしようかな。