私が音楽と関わるようになり、もうどれくらいになったことでしょうか。音の世界の住人の方と出会えたこと、話が出来ること、一緒にいられることで、私の暮らしはぐんと豊かになったように思います。
楽譜を見ながら糸を通してゆく音の粒が、やがて曲になることも知りました。
時間をかけてていねいに紡ぐこと。
どの仕事にも、暮らしにも、共通することなのだと思います。
東京にお住まいの演奏家、田中惠子さんの初めてのCDをデザインさせていただきました。
カメラ片手に初めてお邪魔したのは、ご自宅兼レッスン室。
惠子さんの指先から音が流れ出た瞬間から、室内に光が満ちてきたのを感じて、挨拶もそこそこに写真を撮り始めていました。
やがて届いたサンプル音源は予想を遥かに超えるもので、仕事で走り回る私の車の中で、何度も何度も、飽きることなく流れ続けていました。
バルトークやシベリウスの透明度の高い音色は、夜に聴きながら走ると、また、格別なのです。
ブックレットの原稿も、考え抜かれた言葉が美しく綴られており、悩むことなくCDとしてまとめることが出来ました。
なぜ私は、だいぶ大人になってから音楽と出会ってしまったのか。
これからもゆっくりと、楽しみながら、素敵な人たちと出会いながら、デザインというお役目と共に向き合ってゆきたいと思います。
The bouquet of my favourite tunes for the claviechord and pianoforte
クラヴィコードとピアノで束ねた、愛おしき音楽の花束